2024.08.28

起立性調節障害

起立性調節障害

こんにちは。薬剤師の金丸です。
今回のコラムでは最近耳にする機会も増えた起立性調節障害について簡単にご紹介させて頂こうと思います。
朝が弱く、色々な対策を試してみたけど起きられない。なんとかベッドから起き上がることができてもふらつく、頭が重い、食欲が出ない、気持ちが悪い、調子が上がらない、、、。だけど午後は元気。そんな症状でお悩みの方は、もしかしたらこの病気が関係しているかもしれません。

★起立性調節障害( Orthostatic Dysregulation:OD)とは
起立性調節障害は、循環器系の自律神経機能に調節不全が生じることで脳や全身への血液循環がスムーズに行われなくなり、その結果、身体に様々な不調が現れる病気です。朝に症状が強く出る場合が多く、小学校高学年から中学生にあたる10~16歳の思春期の子どもに好発するとされています。
※成人してから発症する場合もあります。

★症状
倦怠感や起床困難、頭痛、めまい、立ちくらみ、腹痛などの身体的症状から、集中できない、イライラする、記憶力や思考力の低下といった精神的な症状もあります。
不調は午前中に強く現れ、午後からは体調が回復することが多いです。夜には元気になり、逆に目が冴えて眠れないこともあるため、夜更かしや寝不足により朝の不調がさらに悪化する悪循環に陥る場合もあります。
※症状は変動しやすく、調子に波があります。
※春や秋など季節の変わり目や、天候の変化なども症状に影響します。

★原因
自律神経の乱れには生活習慣やストレスなどが大きく関与するとされています。
思春期には悩みやストレスを抱えやすいのと同時に、二次性徴により身体も大きく変化し、心身ともに不安定なため、起立性調節障害が生じやすいと考えられます。

★診断
血液検査や心電図などの検査で他の病気の可能性が低いと考えられる場合、チェックシート、新起立試験などで診断を行います。

ーーー起立性調節障害(OD)チェックーーー
 ◻︎立ちくらみやめまいを起こしやすい。
 ◻︎立っていると気持ちが悪い、酷いと倒れてしまう
 ◻︎入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる。
 ◻︎少し動くと動悸や息切れがする。
 ◻︎朝なかなか起きられず午前中調子が悪い。
 ◻︎顔色が青白い。
 ◻︎食欲不振。
 ◻︎お腹の痛み
 ◻︎倦怠感。疲れやすい。
 ◻︎頭痛。
 ◻︎乗り物酔いしやすい
︎3つ以上当てはまれば起立性調節障害の可能性があります。

★治療
日常生活の工夫、自分でできるセルフケアが重要です。

1、規則正しい生活…早寝早起きなど。朝はカーテンを開けて日光を部屋に入れるようにしましょう。生活リズムを整えることで自律神経も整いやすくなります。
2、水分をしっかり摂る…無理のない範囲で1日1.5〜2Lくらいを目安に摂ると良いでしょう。体水分量を十分に保つことで血圧維持に繋がります。塩分も多めに摂って大丈夫です。
3、適度な運動…お休みの日でも毎日15〜30分程度の運動を心がけましょう。散歩や水泳など負荷の少ない運動が良いとされています。筋力低下の予防や血圧維持に有効です。

その他、薬物療法や血流をコントロールする加圧式の腹部バンドや圧迫ソックスなども組み合わせて治療を行なっていきます。
※薬物治療やOD予防装具に関して詳しくは医師にご相談ください。
※治療期間:重症度により数ヶ月から数年かかるとされてます。再発する場合もあるため、焦らずゆっくり治療を行うことが大切です。

★まとめ
起立性調節障害は、軽症例を含めると小学生の約5%、中学生の約10%が罹患していると考えられており、決して珍しい病気ではなく、身近な病気だと言えます。
朝に辛い症状が出ていても午後から元気になる場合が多いため、本人も周りも単に朝が弱いだけだと見逃してしまいがちですが、重症になると長期欠席状態に至ってしまう場合もあります。
頑張っても朝起きられない、午前中は調子が出ない、学校に行けない。そんな悩みを抱えている方や、身近に同じような症状の家族や友人がいるという方は、意思の弱さや怠け心が原因なのではなく、身体の不調、起立性調節障害が原因かもしれない、という可能性も考えていただけると嬉しいです。
このコラムをきっかけに起立性調節障害について知っていただき、早期から適切なケアを受けられる方が1人でも増えることを願っております。